06 aout 2000 -
今、日本と違ってずいぶん涼しいらしいフランスは、ヴァカンス&フェスティヴァル・シーズンですが、夏は主な月刊ジャズ雑誌もヴァカンスをとるため、フェスティヴァルの様子が読めるのは9月号以降になります。しかし、その頃になったら大きな論議を呼びそうなことが起こっています。
フランスのジャズ・シーン(そしてミュゼット・シーン)における重鎮のひとり、ドラムス&ピアノ&アコーディオン奏者のベルナール・リュバが、居を構えるガスコーニュ地方の村、ユゼストで毎年開催してきた夏のフェスティヴァル、今年で23回目を迎えるはずだった Hestejada de las Arts d'Uzeste Musicalが、資金不足による運営困難のため中止を余儀なくされました(中止になったのは11日から20日までの第2部。本日から10日まで行われる第1部のワークショップは予定通り実施。8月15-20日は、フェスティヴァル存続を訴える、コンサート等も含めた連帯集会のプログラムが組まれつつある)。
毎年のようにポルタル様やルイも出演していたこのフェスティヴァルは、コンサートにとどまらず、音楽や文学、美術のワークショップ、映画上映から政治討論会まで幅広いプログラムが組まれています。ミッテラン夫人がゲストに招かれた年もあったし、皮肉にも中止を知った昨日、私の元にまで届いた(そういえばHPからゲストブックで住所送ったことあったっけ^^;)プログラムによれば、今年のゲストにはロベール・ユー(フランス共産党書記長)や、ピエール・ブルデューの名前も挙がっていました。
また、出演するはずだったミュージシャンは、当然コンパニー・リュバの他、フランソワ・コルヌルー・トリオ、ルイのカルテットと、ルイ&ジャン=ピエール・ドゥルーエのデュオ、ポルタル様(大勢のミュージシャン共演によるインプロ・ナイトがあるはずだった)、ロジーナ・デ・ペイラをはじめとする南仏語で歌うシンガーたち、etc,etc...
ユゼストのオフィシャルHPに掲載されているコミュニケには、コンパニー・リュバの音楽活動による収入やメンバーのボランティアに各種助成金を合わせてもなお、運営が立ち行かなくなってしまった経緯が書かれています。が、これがもうリュバの同志アンドレ・マンヴィエルのヴォカルシミー(声の錬金術)で読んでもらうしかないような押韻とリズムにあふれた文章で、造語もしてるみたいだし私にはとても理解できない^^;;;けれども、「音楽は商品ではない。人生は商品ではない」 という姿勢を貫いてきた人々によるフェスティヴァルが、文化政策に力を入れているフランスでさえ(しかもこのフェスティヴァルは左翼政党からは大きな支持を得ているはずなのに)、それでも立ち行かなくなってしまうという現実。
観客動員と商業的利益が必ずしも約束されない、クリエイティヴなフェスティヴァルの運営を続けている人々は、日々、どんな苦労をしていることか。
ユゼストのフェスティヴァル中止が今後どんな波紋を呼ぶのか、しばらく注目していかねばと思います。