23 juin 2002 -
ルイのECM新譜『Dans la nuit』の国内盤『ダン・ラ・ニュイ〜フォー・サイレント・ムーヴィー』(ユニバーサル、UCCE-1020)が、無事リリースされました(実は現時点でまだお店に並んでいるかどうかチェックしてないのですが、昨22日に見本盤が届いたので、そろそろでしょう)。
前作『ラフロントマン・デ・プレタンダン』に続いて、今回も私がライナーノーツ執筆を担当させていただきました。
日本でおそらくまともに公開されたことがないサイレント映画のためのオリジナル音楽。しかも映画作品そのものも、いろいろといわくありげ・・・。というわけで、映画関係の資料集めから始まったライナー執筆となりました。
ユニバーサルの担当Sさんは、映画の資料ビデオを取り寄せてくださったり、結果的にかなりな字数オーバー(^^;)になってしまったライナーも全文おさまるように配慮し、校正戻しの段階で出た内容上の訂正にもパーフェクトに対応してくださいました。お忙しいなか本当に親切にしていただき、いくら感謝してもし足りないという気持ちです。ほんとにほんとに、ありがとうございました。
そんなこんなで校正戻し締切ぎりぎりまで大騒ぎしてしまったライナーなので、いくつか小さな誤植がありまして、現時点で気づいたものの正誤表をつくりました。内容を左右するものではない単純な誤植なのですが、国内盤を購入された方は、ライナーと照らし合わせてご確認いただければ幸いです。
場所 | 誤 | 正 | コメント |
---|---|---|---|
帯コピー: | 60年の歳月を超えた | 70年の歳月を超えた | 「帯」って、見本盤が届いて初めて見たんですわ〜〜(^^;)ライナーは「70年」になってます。 |
ライナー本文: 注1: 参考文献等: |
Danses et autres scénes Institut Lumiére Cinémathéque L'Avant-Scéne |
Danses et autres scènes Institut Lumière Cinémathèque L'Avant-Scène |
Netscapeだと「?」マークで表示されてるかも。 アクサン・グラーヴ(右下がりのアクセント)がつくべき文字にもアクサン・テギュ(右上がりのアクセント)がついてしまった単語の一覧です。 |
参考文献等: | (éd. france-impire) | (éd. france-empire) | シャルル・ヴァネル伝記の出版社。これはわたしのタイプミス!はずかし〜〜。 |
参考文献等: |
『舶来キネマ作品辞典』 (科学書院、1977年) |
『舶来キネマ作品辞典』 (科学書院、1997年) |
入稿後にフィルムセンターで調べて、校正戻しの時に追加した文献。『Dans la nuit』が少なくとも戦前は日本で公開されていないことを確認できました。 |
参考文献等: | The Intirnet Movie Database | The Internet Movie Database | 原稿では「e」になってたのですが(^^;)ナゾ。 |
それにしても今回のライナー執筆で何が嬉しかったかって、それはもうルイの音楽付きで映画『Dans la nuit』のビデオを観られたということです。これがもう素晴らしい作品で、もしもシャルル・ヴァネルが映画監督を職業としていたら、ジャン・ルノワール級の大作家になっていたかもしれません。まじでまじで。なんとかこの映画の凄さを伝えられるようにしたい、でもネタばれしちゃいけない、でも書きたい、ああああ〜〜〜〜という執筆者の苦悩がライナーの行間から伝わってくるかもしれません(^^;;;
しかし落ち着いてみると、執筆時は映画にとらわれすぎていたかな、たとえば(そもそも作品は日本ではなかなか観られないものなのだから)「架空のサウンドトラック」のように聴く、という楽しみ方にも触れられたらもっと良かったな、という気はしています。
ともかくシャルル・ヴァネルは魅力的な人だなー。これも今回のライナー執筆の収穫。おじいちゃんになってからのインタビュー記事がとても面白かった。執筆中にわが家は「シャルル・ヴァネル祭り」(^^;)となってまとめてビデオ観てました。つくづく、いい俳優です。皆さん、ビデオで出ているジャン・グレミヨンの『この空は君のもの』を観ましょう。しかし1930年代、40年代、50年代とエヴリタイム「おやじ」で年齢不詳なヴァネル、1970年代の『ブーメランのように』あたりでようやくちゃんと「じじい」になっていました(^^;;;もっと他の映画も観たい。『情報(ネタ)は俺が貰った』っていうのがめちゃくちゃ観たい。あと、海外でも未だビデオ化されてないアンリ=ジョルジュ・クルーゾーの『真実』とか。90歳過ぎてから出た映画も。
このライナー執筆の機会に、『Dans la nuit』に限らず、ルイと「映画」の関わりについてできるだけのフォローをしてまとめることができたのは、自分でもわりと満足しています。
ただ、ルイが音楽を手がけたジャン=ルイ・コモリのドキュメンタリーって一本も観てないので(^^;)歯がゆいですねー。
「Tous pour un !」と「La campagne de Provence」という映画については、だいぶ前にネット上で見かけたジャン=ルイ・コモリのエッセイがあったのですが、これどっちもフランスの極右についてのドキュメンタリーなんですね。特に「Tous pour un !」、コモリのエッセイによると、ここにシラク率いるRPRの活動家とル・ペン率いるFNの活動家が登場するのですが、それがどちらも10代のごく普通の女の子で、仲良しの2人は「ねえねえ、どっちのボスがキツイと思う?」なんてキャピキャピ話していて、その様子が「エリック・ロメールの映画のヒロインを思わせる」というのですね。サスガにこれ読んだときには暗くなりました。ライナーを書いてたのが、フランス大統領選決選投票の直前だったし。
ところで、アルバムには「ディア・ディア DIA DIA」という曲が入っています。抽象的な言葉になっているとはいえ、映画の内容をそれなりに反映している他の曲名と違って、これだけが意味不明でした(邦題で「採石場の風景」としたLe Travailは英語で「The Work」、「愛するひと」の原題Amour et Beaute は「Love and Beauty」です)。
どうしてもどうしても気になって、このタイトルについては、ルイに「でんわ」(汗)をして確認しました。その答え。
「えー、あれ?ブラジルの言葉なんだよ。ポルトガル語。でも、意味は忘れた」
「・・・(-_-;)」
というわけで、本人にもすでに「意味不明」とわかって、これで安心・・・か?(diaって英語ならdayのことだよねえ?)
しかし、でんわって本人目の前にするより100倍緊張するもんですわ。(だからはやくメール使えるようになってよ〜(;_;)>ルイ)
と、わざわざ電話で確認したのがこれだけじゃあんまりなので、もうひとつ。
映画は70分以上あって常に音楽がついているので、オリジナルサウンドトラックは当然アルバムより長尺です。観たときに「あれ、アレンジが違う?」と思った部分もありました。ルイは「映画の方の録音はあんまり気に入らなかったんで、アルバムに仕上げるときにはミキシングでいろいろ変えたんだ」と言っていたので、少なくとも映画のオリジナルサウンドトラックとアルバムとは、各パートの聞こえ方が変わっているのは間違いないようです。
うーん、日本でもなんとかNHK名画劇場とかでルイの音楽つき『Dans la nuit』を放映してもらえないものでしょうか。さらにはフランスやイタリアで行われているように「生演奏付き上映」が実現すれば言うことなしなのだけど。