24 juillet 1999 -
パルトネ Parthenay は西フランス、ポワトゥー地方の町。毎年7月、ジャズ・オ・フィル・ド・ロ Jazz au fil de l'eau (水の流れに沿うジャズ...地図でみると、パルトネのそばをロワール川の支流が流れているようです)という名前のフェスティヴァルが開催されています。今年は違うけど、このフェスにはルイも何度も出演しています。
Stephaneは、私がこのHPを作って数カ月経ったころにメールをくれて以来のe-mail友達。パルトネまで車で30分くらいというところに住んでいる彼が、終わったばかりのフェスティヴァルの模様を知らせてくれました。
昨夜(7月17日)、13回目のパルトネ・ジャズ・フェスティヴァルが大成功のうちに終わった。最後の2つのコンサートの話をする前に、僕が観た他のコンサートを振り返ってみることにしよう。
Samedi 10 juillet 7月10日(土)
灼熱の夜!第一部は、すごく才能のあるピアニスト、オマール・ソーサ Omar Sosa のセクステットだ。ジャズ、ラップ、アフロ・キューバン・リズムの見事な混合。ピアニストも回りを固めるミュージシャンも素晴らしい。とても良かった。
第二部、この夜の「目玉」になるはずだった、エルネスト・ティト・プエンテス Ernesto Tito Puentes のビッグバンド。ビッグバンド好き、サルサ好きには最高なんだろうけど、僕がとても残念に思ったのは、これほど才能のあるミュージシャン達なのに、ぜんぜん冒険をしないってこと。眠くなってしまって、コンサートが終わる前に家に帰っちゃったよ。
Lundi 12 juillet 7月12日(月)
どんより曇って、湿度約100%。野外、というより水中コンサートって感じ。でも最初はステージ、最後は即席酒場のテントの下で、ローラン・ドゥオール Laurent Dehors のバンドから飛び出した3人のハチャメチャミュージシャンの演奏を聴けた。ラ・コンパニー・デ・ミュジーク・ア・ウィル la Compagnie des Musiques a Ouir、メンバーはクリストフ・モニオ Christophe Monniot (アルトサックス、ソプラニーノ、ホース、歌、メロディカ、アイリッシュ・ホィッスル、メガフォンとその他インチキ楽器)、ドゥニ・シャロル Denis Charolles (パーカッション、叫び声、歌、じょうろ、クラクション、砂利、ラッパ、クランクハンドル)、シリル・セルジェ Cyrille Serge (バリトンサックス、バスサックス、歌、クラリネットとその他吹きモノ)...これは単に彼らのアルバム (*1)にクレジットされている楽器を書き写しているだけだから、僕の気が変になったと思わないように。どんな音楽かっていうと、君がコンパニー・リュバ la Compagnie Lubat を知っていれば話は簡単なんだけど、いわばポピュラー・ミュージック(ティノ・ロッシ少々、ジョー・ダッサン少々、マイケル・ジャクソン少々、たくさんのオリジナル曲)とビザールな騒音と的を得たフリー・パッセージと思わず笑っちゃう歌とたっぷりのユーモアとその他もろもろ、で、いっぱいなんだ...ほんとに楽しかったよ!でも、終わった頃には僕はすっかりびしょ濡れで、寒くなって家に帰ったけどね。
Vendredi 16 juillet 7月16日(金)
第一部:マルク・デュクレ・ショック!3人の驚異的なミュージシャン、エリック・エシャンパール Eric Echampard (ds)、ブルーノ・シュヴィヨン Bruno Chevillon (b)、そしてマルク・デュクレ Marc Ducret (g)のトリオだ。このトリオの『描写音楽 musique descriptive』(マルク・デュクレ本人がこう呼んでいるんだ)を、君は絶対気にいるよ。聴衆に媚びるところが全くない音楽だから、「オレってこれ好きかも」と思うようになるまでに15分くらいかかったけどね(笑)!でも一度ハマったら、もうトリップ状態。知的疲労感を味わいつつ、並外れたテクニックを持つミュージシャンのプレイに圧倒されながら、素晴らしいひとときを過ごしたよ。でも、ステージの3人があんまり凄すぎたんで、自宅でアルバム(*2)を聴く気にはなれそうもないなあ。君はスクラヴィスのAcoustic Quartet 好きだったよね。もしこのトリオを観るチャンスがあったら、絶対逃しちゃダメだよ!
第二部:いま大人気のアコシュ・Sと彼のユニット。ただし、僕としてはガッカリだったね。リーダーの Akosh Szelevenyi は晩年のコルトレーン風のスタイル(それは僕の好みじゃないんだけど)で、彼の演奏は凄くいい。でも、他のミュージシャンがいまいちなんだ(特にドラマーは、エリック・エシャンパールのほうがずっとずっといいよ)。せっかくベルトラン・カンタ Bertrand Cantat (ノワール・デズィール Noir Desir の素晴らしいヴォーカリスト)も参加していたのに、僕は納得いかなかった。結局、やってる音楽がフリージャズの一番つまんないクリシェにとどまっていたってことだね。
Samedi 17 juillet 7月17日(土)
フェスティヴァルとの共同企画でデビューした新グループ。コントラバスのイヴ・ルッソー Yves Rousseau、ヴァイブのフランク・トルティエ Franck Tortiller (2人とも優れたミュージシャンだ)、以下『ア・シエル・ウヴェール "A ciel ouvert"』クィンテットのメンバーは:ダヴィッド・プラディエ=デュテイユ David Pouradier-Duteil(ドラムス。ベリーグッド)、ヴァンサン・クルトワ Vincent Courtois (チェロ。完璧)、ミッシェル・ゴダール Michel Godard (チューバ。唯一無二、代役不可能)。旅のように美しい音楽...素敵な第一部だった。
さて、いよいよ予定されていたビッグ・イベントだ。
リシャール・ガリアーノ Richard Galliano / ミッシェル・ポルタル Michel Portal DUO !!!!!!『Blow Up』オン・ステージ!2人の天才ミュージシャンが1度に観られる!至福の2時間!
ところが僕らに知らされたのは、何とも不運なことにリシャール・ガリアーノが前日イタリアで食中毒を起こして出演をキャンセルしたということだった。
でも幸いフェスティヴァルのオーガナイザーが、ブルーノ・シュヴィヨンに (シュヴィヨンなりのやり方で)ガリアーノの代わりを頼むというグッドアイデアを思いついてくれた。...結果は、ショック!至福の2時間!2人の天才ミュージシャンが1度に観られる!ミッシェル・ポルタルのコンポジションによる前代未聞のファーストステージ!ガリアーノ目当ての観客全員の心を奪ったブルーノ・シュヴィヨン!比類ないミッシェル・ポルタル!幸福って、このことだよ!
これでお分かりですね。なぜ私が個人的にもらったこのメールを訳して載せずにいられなかったか。
マルク・デュクレ・トリオの(今のところ)最新のLIVEレポートと、アクシデントで実現したポルタル&シュヴィヨンのDUO!!!ちょっとこれは、羨ましすぎ(リシャール・ガリアーノはお気の毒でしたが、9月の日本では元気に演奏してくれることでしょう)。
ああ、しかししかし。頼むからどなたかデュクレ・トリオを日本に呼んでください。
Stephaneが報告してくれた以外のJazz au fil de l'eauのプログラムも凄くて、個人的にはフランソワ・コルヌルー Francois Corneloup のトリオ、クロード・チャミチアン Claude Tchamichian のビッグバンド、シルヴァン・カサップ Sylvain Kassap、特にドニク・ラズロ&カルロス・ズィンガロ Daunik Lazro & Carlos Zingaro なんてもー、観たい観たい観たいよ〜Stephaneってばどうして観なかったのー?とか言いたくなっちゃうんですが(^^;)これは仕方のないことで。
ともかく、こちらではなかなか様子がわからないフランスの、それも地方で行われている興味深いジャズフェスの模様を速攻で知らせてくれたStephane、ありがとー(^^)/
(*1) アルバム"La Compagnie des musiques a ouir" は、いまおフレンチ・ミュージック・クラブの「セレクシオン」で紹介されています。でもYTTのブティックは夏休み中。
(*2) Marc Ducret "L'ombra di verdi" (Screwgun 70010)