きょうは、いつもいつもお世話に、おせわ〜になりまくっているYTTのツシマさんに、お会いする日。
YTTは、日本向けにフランスのレーベルのディスクを卸している会社。ツシマさんは「向風三郎」というお名前も使いながら、YTTのサイトであるおフレンチ・ミュージック・クラブや音楽誌でフレンチ・インディーズ系ポップの動向を紹介したり、ミオセックのCDなどの解説や歌詞対訳で活躍されています。で、じつは、Nato, In Situ, Potlatch, Rectangle...といったインディーズのジャズ〜インプロ系レーベルのディスクも、大部分はこのYTTが卸しているのだそうです。
メニルモンタン駅に近いオフィスをたずねて、初めてお会いしたツシマさんは大柄で優しそうな方。週末にCDをごっそり出荷したばかりだとかで、オフィスの棚はほとんど空っぽ。
スタッフの方々にご挨拶したあと、ツシマさんは車を出して、私をバスティーユにあるレ・ザリュメ・デュ・ジャズ Les Allumes du Jazz のオフィス(たまたま、となりの建物にはサラヴァ・レーベルのオフィスもありました)に連れていってくださいました。
車中、最近のフランスは日本映画ブームだという話(ちょうど『もののけ姫』公開直前でそこら中にポスターが貼ってあった)を伺いました。『子連れ狼』シリーズが全作上映されてフランス人にも大受けだったということ、わたしは上映中のお客さんの様子がぜひ見たかった(^^;)
レ・ザリュメ・デュ・ジャズは、フランス国内のインディーズ・ジャズレーベルを束ねる組織。98/99年のカタログ(右の写真が表紙)が出た時点では36レーベルが加入していましたが、今はもっと増えているんじゃないかな(このカタログ、日本で扱ってるお店があるのかどうかわからないけど、ほしい!という方はYTTに問い合わせてみてください。カタログ自体は無料、でも送料が単行本1冊分くらいかかります)。
インディーズのなかでは最大手と言えるのであろうLabel Bleuから、先ほど書いたインプロ系までいろんなレーベルが加入しています。ホームページを作ることも考えているそうで、オープンすればフランス・ジャズ情報がまとめてわかるとても興味深いサイトになるのでは、と期待。
ツシマさんのはからいで、私達は、オフィスで働くニコラ君と一緒にオフィスの近くにあるレストランでランチをとりました。
ニコラ君は、大学卒業したてかな〜?と思うくらい若い感じの、長身の好青年。ツシマさんと日本の音楽市場(ツシマさんの「ヴィジュアル系」の説明が面白かった^^;)などの話題に花が咲きます。
私は以前からときどき名前を目にして気になっていたギタリストのことを聞いてみました。
「ジル・コロナドっていうひと。Urban Moodっていうグループで活動してるんじゃないかと思うけど」
「うんうん、Urban Moodは、すごくいいジャズロックのバンドだよ。お薦め」
そのアルバムがこれ。Transes EuropeennesのCDはときどき見かけるけど、これは見たことないのよねえ。コロナドはポスト・マルク・デュクレ系って言っていいのかなあ、変拍子ジャズロック、でもゴリ押しじゃない。とても繊細。チェロが入っているところがフランスっぽい?ギヨーム・オルティが参加してることにも注目。
Gilles Coronado / URBAN MOOD Transes Europeennes, TE019 Gilles Coronado: g Guillaume Orti: sax Vincent Segal: cello Norbert Lucarain: ds |
レ・ザリュメのオフィスを後にしてYTTのオフィスに戻り、しばしツシマさんとおしゃべり。そのうち、ツシマさんが
「せっかくだから佐藤真さんに会ってみませんか?」
と提案してくださいました。
佐藤さんは、民間の日仏文化交流施設エスパス・ジャポンの運営や、日本でも洋書店やフランス語学校で見かける日本語情報誌オヴニー OVNIの編集長としてのご活躍が知られていますが、じつはフリージャズ〜インプロ系のドラマーでもあり、ジャン=フランソワ・ポーヴロスと一緒にバンドを組んで活動している方。ツシマさんが電話をしてくださり、佐藤さんも1時間ほどなら大丈夫とのことで、またまたツシマさんの車でエスパス・ジャポンに向かいました(うううう、運転手させてしまってすみませんでしたあ>ツシマさん)。
忙しそうな様子の佐藤さんは、でも気持ちよく迎えてくださり、しゃきしゃきと近くのカフェへ案内してくださいます。
「へえー、スクラヴィスのファンなんですか!最近、ロマーノとテクシェとトリオのアルバム出しましたねえ。あれがまたよく売れてるらしいですねえ」
とおっしゃる佐藤さん、ちょっとのあいだに出るわ出るわフランスのインプロ・シーンの話題がいっぱい!仕事のためツシマさんが先に戻られてからも、しばらくお話をうかがいました。
「そういえば、明日お昼にジャン=フランソワ・ポーヴロスと会うことになってるんですよ。よかったらあなたもいらっしゃい。ジャン=フランソワも、そういうハプニングが大好きな男ですからきっと喜びますよ」
という佐藤さんのご厚意に、舞い上がるワタシ!ドミニクに続く「まさか会えるとは思ってなかった」シリーズ第2弾!ツシマさん、佐藤さん、大感謝ですう。
エスパス・ジャポンを出て、私はドラジビュスのフランクとロー(Lore、というと私はついロールと書きたくなるんだけど、ほんとはrなんてほとんど聞こえないので、にむらじゅんこちゃんが書いてるみたくローというのが実際の発音にずっと近い)のおうちに遊びにいきました。
典型的なパリのアパルトマン、って感じの建物に入り、小さなエレベーター(手動の開き戸なんだよねえ、これが)で上の階へ。分厚い木の扉の前でベルを押すと、ローがドアを開けてくれました。
ロー、あいかわらずすっごくかわいいです(*^^*)というか、顔立ちそのものは彫りの深い美人顔で、スラっと背が高くて大人っぽく、知らないと彼女がドラジビュスのジャケットみたいな絵を描く人とは思えないかも。いま、日本ツアーのライヴ盤を25cmピクチャディスクで出す準備をしているのですが、ディスク用の絵がまた全身の力が抜けるほどかわいいのよおおお。
「リヨンはどうだった?スクラヴィスには会えたの?なにかディスクは買えた?」
「リヨンのFNACで、スティーヴ・ワリングのCDをいっぱい見つけたよ」
「ほんと?いまね、レクタングルのカンタンが、片面がスティーヴ・ワリングで片面が私達ドラジビュス、っていうシングルを作りたいって考えてくれてるの。カンタンのお父さんって、ほら、有名なフリージャズのドラマーでしょ」
「ARFIのメンバーのクリスチャン・ロレだよね。スティーヴ・ワリングとも共演してる」
「そうなの、だから彼もワリングのこと良く知ってるのよ」
うわー、それグッド・アイディアだと思う。ぜひぜひ、実現してほしいな。
夕方、ローは私をフランクのいる「びんぼーたわー」に連れていってくれました。このお店は、フリージャズ、インプロ、ノイズほか各種エクスペリメンタル系ディスクに関連書籍やファンジン、さらに日本のガジェット小物やマンガを売っていて、今はフランクがお店を仕切っています(もともとは、パリに住んでいたにむらじゅんこちゃんと、もうひとりパリ在住の日本人の女の子と、サラヴァ・レーベルのバンジャマン・バルーが始めたそうです。かつては上の階にサラヴァのオフィスが入っていたそうな)。
びんぼーたわーはこんなとこ。 Bimbo Tower 5, Passage St Antoine, 75011 PARIS tel/fax 01.49.29.76.70 |
ここで仕事中のフランクにも再会。フランクはいつのまにかあごひげを生やしています。
今夜は、彼がDJとして参加しているFM番組があるそうで、その番組を制作しているALIGRE FMのスタジオにも一緒に連れていってもらえることになりました。
フランスには小さいFM局がいっぱいあるそうだけど、ALIGRE FMもそのひとつ。フランクが出演している番組 SONGS OF PRAISE は、数人のDJがそれぞれ選んだお薦めディスクをかわりばんこに紹介するスタイルをとっているようです。かかるのは、フリージャズからテクノ、ノイズ、インディーズ系ロックまで。フランクは、デレク・ベイリーとスージー・イバーラの共演盤や、ジャン=フランソワ・ポーヴロス&灰野敬二のフランス・ツアーライヴ盤(次回に紹介します)をかけていました。
スタジオには、Rectangleのカンタン・ロレ君もちょっとだけ姿を見せました。オフィシャルサイトの写真はかなり前のものと判明(^^;)いまのカンタン君は髭面はそのままだけど、けっこうぽっちゃりして顔まんまる。ほんとーに若くて、こんな男の子があんな凄いレーベルをやってるんだあ、と妙に感心しちゃいました。
パリもやはり冬休みモードで面白そうなライヴはほとんどなかったのだけど、ソン・ディヴェール・フェスティヴァル Festival Sons d'Hiver がようやく始まったところで、明日はブノワ・デルベックとスティーヴ・アルグエルのライヴが予定されています。
収録中にいきなり、そのライヴのinfoをローがフランス語に続いてわたしが日本語(^^;)でアナウンスすることに決められ...1分間、はちゃめちゃな日本語放送が...あの放送を聞いていた人はいったい何人くらいいるのだろう(大汗)。
(つづく)