昼前に成田を出発し、ほぼ満席のJAL直行便でシャルル・ド・ゴール空港に到着。荷物を受け取ってタクシー乗り場に着いたのは午後4時半ごろだったか。
外は小雨。無愛想なタクシー運転手のおじさんに行き先を伝える。私の発音だと通りの名前がおじさんになかなか伝わらなくて、地図で確かめてもらう。
フランからユーロへの移行期間、こっそりメーターを見るとフランのままで動いている。このおじさんはユーロで払うと嫌がりそうだ。前回の旅行で余ったフランを持ってきて良かった。通貨がユーロに切り替わるまでに絶対にもう一度フランスに行く!と決めて、現金は再両替せず残しておいたのだ。フランが消える直前に実現したフランス行き。お札は1種類1枚ずつ記念にとっておくことにして、後はこの旅行で使いきってしまおうと思う。
外に出て、ちっとも寒くないことに驚く。雨のせいかな。それなりに覚悟して来たのだけど(年末は大寒波だったというし)、暖冬の東京から来てもあまり違いを感じない。
出発前、よくそんな寒い時期に行くね、と何度か言われたけれど、昔、2月にワルシャワに行ったことがあるので、冬のヨーロッパには抵抗がない(大雪は体験したことはないけど)。航空券も安いし、それになんてったってこの時期に行かねばならないわけがあるのだ。
殺風景だった窓の外が、ポルト・ドーフィーヌあたりから俄然パリらしくなってくる。フランソワ・オゾン『8 femmes』の宣伝ポスターが目をひく。今もなお美しい1917年生まれのダニエル・ダリュー。ポスターほしいなあ・・・
目指す友達の家は20区にある。タクシーはどんどん下町っぽい通りに入っていく。にぎやかで、気取ってなくて、楽しそう。やがて目指す番地の手前に到着。荷物の積みおろし込みで240フラン也。
荷物をひいてアパルトマンの扉の前まで来て、暗証番号を入力しないと扉が開かないことに気づき(^^;)またまた荷物をひいて大通りに戻り、カフェのタバコ売場でテレカを買って電話。友達が外まで迎えに来てくれた。アパルトマンの扉の開け方から彼女の部屋のドアの開閉のコツまでを教わっていると、外から帰ってきたご夫婦が、ドアが故障でもしたのかと心配してくれた。
彼女がいれてくれたお茶を飲みながらしばらく話していたら、もう出かける時間。パリに着いたとたんにコンサートがあるのだ。ソン・ディヴェール・フェスティヴァルのプログラム、In Situレーベルのディディエ・プティが企画したその晩のコンサートでは、フィル・ミントンとミッシェル・ドネダがデュオで演奏することになっている。会場はアルフォールヴィルのテアトル・ステュディオ。前回、帰国直前にやはりソン・ディヴェールでAmbitronixのコンサートを観た会場で、地図も持っている。
一度行ったことがあるから安心と、友達が教えてくれた最寄りのメトロ駅へ。
・・・が!
メトロの窓口が閉まっている!!!まだ夜7時にもなっていないのに!!!
どうしようどうしよう。自動券売機が一台だけあるが、メニューの選び方に四苦八苦。やっと選べたと思ったら、現金はユーロの小銭しか受け付けない。ぎゃーっフランの小銭なら充分あるのにーっ。ユーロはまだお札しか持ってないのよーっ。よくみたらクレジットカードでも買えると表示されているのでトライしたが、私の日本製カードはなぜか受け付けてくれない(ちなみに、SNCF(国鉄)の自動券売機もダメでした。もちろん普通の買い物や、空港のクレジットカード電話、切符も窓口で買う分には全然問題なかったのに。なんかシステムが違うんでしょね)。
顔面蒼白になって地上に出るが、タクシーを拾うにもどこに行けばいいのか?日本みたいに流しのタクシーなんてないんだから。
半分パニック状態で大通りをうろうろしていたら、空車のタクシーを発見。あわてて駆け寄り「アルフォールヴィルまで行ってください!」ところが運転手のおじさんの返事は「オレはアルフォールヴィルはよく知らないんで他のタクシーに乗ってくれ」。
げえええええええっっっっっ!
(なんでこんなにあせっていたかというと、この日のコンサートはそのままライヴレコーディングされるため、開演後は会場内に入れなくなるという情報があったからなのです)
「**ちゃーん、ぴんちーっ。ギシェ(窓口)が閉まってるー」(←友達は日本人です)と半ベソ状態で戻ってきた私のために、彼女が電話でタクシーを呼んでくれた。パリは慢性的なタクシー不足だそうで、最初にかけた方はいつまでもつながらず、別のセンターにかけ直して見事に予約を入れてくれる。来た早々、お世話になりまくってしまった。
指定の場所で祈るような気持ちで待っているところに、タクシーが止まったときの喜びといったら。こんどの運転手は若い、まだ男の子って感じの、ムスリム系っぽいおにいちゃん。「行き先は?おー、アルフォールヴィルだったらよく知ってるよー。なに、テアトル?何時から始まる?だいじょぶだいじょぶ、まかせときってー」と、夜のパリをびゅんびゅん飛ばしてくれる。
アルフォールヴィルの近くまで来たところでちょっとした渋滞に巻き込まれたけど、開演7時30分のところを10分くらい遅れた程度で無事、会場に到着。嬉しさのあまり、それとユーロ換算がピンとこなくて、おにいちゃんにチップをはずんでしまった。