「僕はルイとはしょっちゅう一緒にやってるよ。そうそう、来年の1月25日にもアミアンでルイとデュオをやるんだ。・・・え、知らなかったの?ダメだなあ、そんなことじゃあ、アハハ!」
去年の秋、横浜の「サモワール」で、エルンスト・レイズグルに流ちょうなフランス語でからかわれたのが、今回の旅を決意させるきっかけになった。
しばらくの間、いくらこちらで調べても1月25日のコンサートがルイとのデュオだという確実な情報が見つからなかったのだけど、出発の1週間くらい前になってようやく、ネット上のアミアンの観光情報で確認できたのだった。25日は、どこかでポルタル様のライブも行われるはずだったけど、そんなわけでこちらは泣く泣くあきらめることに決定。
ポルタル様といえば、昨日ギ・ル・ケレックさんが「ポルタルのミネアポリスのライヴ盤がもうすぐ出るよ。私の撮った写真集もつくんだ」と言っていたが、パリ北駅に向かう前に通ったバスティーユ駅の構内には、そのライヴ盤の大きな宣伝ポスターが貼られていた。
北駅は最近建て替え工事を行ったようで、こぎれいなショッピングセンターができていた。でも、自動小銃?で武装したいかついお兄さん達が、よく訓練されていそうな犬を連れて構内を巡回している。きっと9.11以降、大都市のターミナル駅はどこもこんな感じなんだろう。シャルル・ド・ゴール空港も迷彩服のお兄さんがいっぱいいた。しかしフランスは軍服のデザインも洗練されているので、怖いなりにカッコよかったりもする。
12時31分発の普通列車に乗って約1時間で到着。アミアンって気楽に行けるところなのね。昼間の観光だけならカンペキ日帰りエリアだわ。少し北上したのに、あいかわらずちっとも寒くなくて、以前親友にバースデイプレゼントでもらった、お気に入りの赤い手袋も出番が回ってこない。
ホテルを予約していなかったので、とりあえず日本のガイドブックに載っていた、駅からさほど遠くないホテルに行き、料金が予算内なのとレセプションの女性がとても感じのいい人だったので即決。帰りが遅くなるので先にシャワーを浴び、少しのんびりしてから出かけることに。
雨の降り出した大通りに出ると、ちょっとしゃれたブティックや雑貨店が並んでいる。清潔で、かわいらしい街という印象。この街はけっこうリッチなのではないかしら。行き交う人達がことさらお金持ちっぽいというわけではないけど、なんとなく表情に余裕が感じられる。右手にはアミアン大聖堂が見え隠れする。後で行ってみようっと。
やがて見えてきた、コンサート会場のメゾン・ド・ラ・キュルチュール。モダンなデザインの立派な文化センターを見て、この街がリッチだという印象が強化される。
あのラベル・ブルーもこのセンター内にあるそうで、レセプションにはラベル・ブルーのCDがディスプレイされ、試聴機もあり、当然CDを買うこともできる(少し安かったと思う)。地元の小学生が、試聴機に入っているラベル・ブルーのCDを面白そうに聴いていたりする。レセプションにはギャラリー(若手写真家のグループ展をやっていた)とカフェがあり、上の階には大小のシアターがある。たぶん一般人には見えないところにはレコーディングスタジオもあるんだろう。
チケットを買おうとしてふと見ると、私が来たのとは反対のドアから入ってくる人影が見えた。あ、ルイだ。
「やあ!元気?こっちにはいつ着いたの?」と声をかけてきてくれたルイは私がいるのにもさほど驚いていないので、フランスに来ることがちゃんと伝わっていたとわかってホッとする(^^;)。
「新年に、***(ルイの友達)のとこから君にメール送ったのは届いた?」
「うん、すっごく嬉しかったー。ありがとー」
「いつまでフランスにいるの?後はどこへ行くのかな?」
「明日はパリに戻るよ。デリベラシオン・オルケストラに行くよ。リスボンにも行くし、あと、リヨンも。ジャンフィリップと会う約束してるの」
「そうかあ。僕がもうリヨンに住んでないっていうのは知ってるよね(←去年、他の街に引っ越したそうです)。彼に会ったらよろしく言っといて」
コンサートの準備があるので、ルイとはひとまずここでお別れ。思いがけず早く再会できたので浮かれた気分でチケットを買い、センターの公衆電話から自宅に電話で無事(^^;)を知らせ、2月6日にお会いすることになっているYTTのツシマさんにも電話を入れてから、街歩きに出かける・・・といっても、けっこう雨が降っているのでちゃんと「観光」したのはアミアン大聖堂だけ。小さなアミアンの街のなかで、ひときわ大きく荘厳なゴシック大聖堂。教会建築が好きな方にはお薦め。
しばらく通りを歩いてからまたセンターに戻り、カフェでココアを飲んだり、試聴機でボヤン・Zなんかを聴きながら開場までの時間を過ごした。