お店が休みになってしまうパリの日曜日。日曜日は退屈・・・
本当はこの日の午前中、パリのどこかでポルタル様の出演するクラシック・コンサートがあったのかもしれないのだ。詳しい情報が見つからなくて、パスしてしまったけど。午後おそくには、シテ・ド・ラ・ミュジークでジョエル・レアンドルの出るライヴがあったはず。これもパスしてしまった。とほほ。連日の移動とライヴ観戦で、かなりへばっている感じ。
でもひとつだけ、絶対に見逃さないと決めていたコンサートがあった。
ラ・フネートル La Fenetre(ウェブサイトがある)というジャズクラブで行われるローラン・ドゥオールのソロ・ライヴ。6時半スタートというので、6時頃に到着。
入ってみると、どことなくプランBとかテレプシコールとかを思い出させるスペース。50席程度の椅子が並べてある。始まる頃にちょうど席が埋まった感じ。ここはソロかデュオのコンサートが多いようだが、なるほどそれくらいの規模にちょうど良い広さ。
主催者の挨拶に続いて登場したローラン・ドゥオールは、白いパジャマみたいな上下を着ている(ほんとにパジャマ?それともアフリカの男の人が着ているような服かもしれない)。細長い管楽器を構えて挨拶。
「皆さん、この楽器をご存知ですか?これは、コントラバス・クラリネット、ですよ」
彼の演奏はフリー・インプロヴィゼーションではなくて、トリオや大編成のTous DehorsのCDで聴いていた彼自身の曲をソロで展開していた。最初に出したコントラバス・クラリネットから、バスクラやクラリネットに持ち替えて、ユーモアたっぷりの楽しい演奏を繰り広げる。思いっきり顔をゆがめてモーツァルトを吹きながら最後は椅子から転げ落ちたりとか、古典的ギャグもかますのが微笑ましい。しかし基本的にはこの人もすごおおく上手いの。
アンコールに応えて、ドゥオールがステージ左端のベンチに置いてあったズダ袋をとりあげた・・・と思ったら、バグパイプでした(^^;)。バグパイプの演奏に、観客は皆大喜びだった。
狭いロビーに出たとき、突然眼鏡をかけた男の子に声をかけられた。
「すみません、あなたもしかしてミキコさんじゃないですか」
それが、シャルル君だった。わー、やっと会えたねえ。デリベラシオン・オルケストラの時もいたの?うん、日本人らしい人を探したけど人が多すぎてわからなかった。写真を撮ったよ。
るいるいフォーラムに書いてくれたり、ギャラリーに写真を提供してくれてきたシャルル君は23歳で、若者のしゃべる早口フランス語が私にはなかなか聞き取れないのだった(^^;)。
シャルル君は、別のコンサートで撮ったTous Dehorsの写真をローランに渡しに来ていた。大喜びのローラン・ドゥオールが私のほうを見て、
「ところでこちらのマドモワゼル?マダム?あなたは・・・」
「彼女がミキコです。ルイ・スクラヴィスのサイトを作ってるんですよ」
と、すかさずシャルル君。ああーっ、君がそうかーっ!とローランに驚かれ、その場にいた他の知らないお客さんにまで「へえ、彼女なんだあ・・・ブラヴォー!」と声をかけられ、どぎまぎ。10日のイヴ・ロベール・クインテットにも行きますというと、ローランはとても喜んでくれた。シャルル君とは、9日のNapoli's Walls初演で会えそうだ。
翌4日、私はナンシーに来ていた。初めて訪れたナンシー、素敵な街だ。お約束のスタニスラス広場は、やはりとても美しい。今日も驚くほど寒さを感じない。ロレーヌ地方ってもっと寒いはずなのに。でも、列車の窓から見た枯れた林の木がバキバキに倒れている。冬の嵐のせいなのだという。
ナンシーで、私は2年ぶりにミッシェル・ドネダと、ヴァンドゥーヴルのドミニク・レペコーに会った。明日はヴァンドゥーヴルのスタジオで、ミッシェルと女性チェリストのマルティーヌ(後で、彼女がパーカッションのレ・カン・ニンの奥様だと知った)がレコーディングをするという。
夜、スタニスラス広場のすぐそばにあるギリシャ料理店で、仕事を終えたドミニクが皆にごちそうしてくれた。ドミニクは背が高いし険しい顔をしていて、会うとやっぱり緊張してしまうのだが、しかし本当はとてもとても優しい人なのだ。