きょうは午前中から、アンドレ・マルロー文化センター(ウェブサイトがある)のスタジオでミッシェル・ドネダとマルティーヌのデュオによるインプロヴィゼーションのレコーディングがある。
ドミニクはマルティーヌと私を車で文化センターに連れていってくれた。文化センターのあるヴァンドゥーヴルはナンシー市の郊外で、HLM(低所得者向け集合住宅)がたくさんある。パリやリヨンの郊外と同様、やはりちょっとワイルドな地区だそうで、ナンシー市内に住む人達からは少々敬遠されたりしているらしい。
この文化センターで、毎年5月に「Musique Action」フェスティヴァルが開催されている。シアターではこれから演劇の上演が始まるということで、すばらしい舞台の上にはそのセットが準備されていた。
スタジオで、ミッシェルとマルティーヌが演奏を始める。ソプラノ・サックスとチェロによる、数分間のインプロヴィゼーションを4つほどレコーディングした。後で聴き較べて実際にCDに収録する録音を選ぶらしい。何のアルバムなのか聞きそびれてしまったが、ヴァンドゥーヴルのレーベルで出す新譜用のレコーディングなのかもしれない。
2人の演奏はとても繊細で、美しかった。
昼食はセンターのカフェテリアでとった。明るい給仕のおにいさんが、お皿にオムレツやソーセージをとってくれる。こういうとこの食事もわりと美味しい。
昼食を終えてからしばらくロビーでコーヒーを飲んで過ごした。ロビーには、近所のおじいさんとかが何をするでもなくソファに腰掛けていたりする。平日の昼間に図書館に行くといつまでも新聞を読んでいるおじさんがいたりするが、それと同じ感じだ。
レコーディングは午後も3、4回行われた。このあとは皆で収録する録音を選ぶらしかったが、私はそろそろタイムリミット。皆に挨拶して、ナンシー駅に向かった。
パリに戻って一休みして、今夜もソン・ディヴェール・フェスティヴァルに出かける。きょうはクロード・バルテルミーのソロ、しかもウードを弾くのだという。それからアコシュ・S・ユニット。
またまたドキドキしながらRERに乗り、アルクイユ・カシャン駅 (Arcueil-Cachan)に到着。案の定、会場がどこにあるかわからない。しかし、明らかにコンサート会場を探していると思われる大柄で髭面のおにいちゃんがいたので声をかけ、「こっちでいいんですかねー」とか言いながら一緒に歩いた。このおにいちゃんはマルセイユから来たのだという。アコシュのバンドのドラマーと友達だと言っていた。
結局、会場は駅から大通りをまっすぐ行けば到着できる場所にあった。すでにかなりの人でにぎわっている。きょうの会場は、もちろんいつものように地元のお年寄りもいるけど、椅子のないステージ前のスペースに陣取っているのは、今までのライヴよりかなり若い人達だ。アコシュはノワール・デジールの準メンバーみたいに活動しているので、ロックファンの若い子達にもかなり人気があるんだと思う。私も個人的にベルトラン・カンタの飛び入り出演なんてのを期待していたのだが、それはさすがになかった(^^;)。
場内が暗くなり、クロード・バルテルミーが登場。すぐにウードを抱えて演奏を始める。これがもう、少なくとも私の耳には、ほんものの北アフリカの伝統音楽と区別つかないような演奏だった。チュニジアに行ったときのこととか思い出してしまいました(←初めての海外旅行がなぜかパリとチュニジアだったのよ^^;)。バルテルミー自身は、いまウードの演奏にとても真剣に取り組んでいるらしいので、真剣な分とてもオーソドックスな演奏になっているのかもしれない。他のお客さんはどういうふうに聴いていたんだろう。私としては、ううーん、珍しいステージを観たという意味では嬉しかったけれども、やっぱり「Sereine」のグループでバルテルミーを観たかったという思いは強い。
アンコールで弾いたブズーキではもっとリラックスしていて、お遊びで「その男ゾルバ」のテーマをほんの少しだけ弾いてみたり、ロックンロールな速弾きをしてみせたりした。
休憩をはさんでアコシュ・S・ユニットが登場。歓声が上がり、やはり若いコたちがアコシュ目当てに来ているのがよくわかる。
私はカンタン・ロレ以外のアコシュ・S・ユニットのメンバーを初めて見たが、リーダーのアコシュも、ドラマーもベーシストも、このひとたち、怖そ〜〜。酒いっぱい飲んでそ〜〜〜。それから、他のメンバーのようにおやじっぽい青年(^^;)ではなく、ひとり正真正銘の「おじさん」がいて、彼はヴィエル・ア・ルー(ハーディガーディ)を抱えているのだ。んで、残るカンタンはというと、おいおい去年デヴィッド・グラッブスのライヴでノエルと一緒に来日したときより、更に一回り貫禄がついてるぞおおお。ひげもいっそう伸びてサンタのおじさんみたいだしー。ほんとは若いのにい。あっもーさっそくアコシュもカンタンもステージでビール飲んでます。だからそんなことになるのよおおお。
彼らの演奏は、アコシュのルーツであるハンガリーの伝統音楽がちょっとブレンドされた、力で押す系のフリージャズというのかしら。たいへんパワフルで若いコたちには大受けだったけれど、私には単調に感じる部分もあったのは確か。ヴィエル・ア・ルーのおじさんがハンガリー語(たぶん)でぶつぶつと呪文のように歌うところなどは、なかなか鬼気迫るものがあった。