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Bruno Chevillon (contrebasse) / Frances-Marie Uitti (violoncelle) Duo
1999年4月29日(木)12:00 Collegiale St. Pierre (Le Mans)
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とてもとても見たかったブルーノ・シュヴィヨンと女性チェリストのデュオ! ウェブやプログラムの写真がすごくかっこよかったんですねー(^^ゞ 会場は、市庁舎の隣にある歴史的建物(教会建築だと思うのですが)でした。ギャラリーとして使われているのですが、室内の壁は石のブロックがむき出しのままで、ちょうど東京ステーションギャラリーに似た雰囲気の、こじんまりした平土間のホールでした。
重い木の扉を開けて入ると、いきなり2人がリハーサルをしているところが目に飛び込んできました。うーん、ご想像どおり絵になってましたよ(^^)>MIKIKOさん。
向かって左にシュヴィヨン、右にウィッティ。上手くライトが使われて、とてもいい雰囲気。フランスマリーさんは、眼鏡をかけた知的な感じの人。控え室も何もなくて、そこらへんの床に楽器ケースが置いてあります。しばらく隅っこで見学して、再び開演時間にもどると、もう満員。平日のお昼なので、町の人が休憩時間にやってくるのにもちょうどいいのかもしれません。
1段高くしてあるだけのステージを囲むようにパイプ椅子が並べてあって、私はシュヴィヨンの右側から彼の背中を覗き込むような位置になりました。楽器の裏側の、肩の触れる所が擦れて白くなっているのが見えるような場所。手さばき見放題。
MIKIKOさん情報によると、シュヴィヨンの唯一?の「俺的師匠」は、バリー・ガイなんだそうですが、たしかにバリー・ガイ&マヤ・ホムバーガーのデュオ("Ceremony" ECM New Series 1643 ←このライブは翌日聴きました)を彷彿とさせるような雰囲気の、斬新で芸術性の高い(という言い方で良いのか)、知的な音楽だったと思います。リハーサルで繰り返していたフレーズが聞こえましたが、楽譜は使っていませんでした。タイトルの紹介もなし。たんたんとデュオ、ソロをつなげていくのみ。
プログラムによると、この2人のデュオは昨年10月のマルセイユでのコンサートが初回だったらしくて、これが2度目なのかも? まだまだこれから練られたり発展していくような感じもしました。
それにしても、シュヴィヨンの演奏の繊細さと強靭さを、改めて(至近距離で!)目の当たりにした感じです。楽器のどこをどう使えばどういう音が出る、ってミリ単位で熟知してるんじゃないかと思うような手の動きに見とれました。指、弓弾きのほか、フレットの途中に撥をはさんで雑音を入れたり、楽器の胴のあちこちをパーカッションのように細かく叩いたりしますが、その場所なんかも。演奏中、一番低い音の弦をぐんぐんゆるめて、ただの針金にしちゃったかと思うと、あっという間にぐいぐい巻き上げてまたもとの音に戻したり。そういうのも寸分の狂いもなくて。
ウィッティの得意技は「2本弓使い」なんだそうです。右手にボウを2本持って、複数の和音や旋律を同時に進行させるという。わりとゆっくりと、空気が複雑に振動する心地よさみたいなもんがありました。(関係ないけど、本番では眼鏡を外してお美しかった(*^^*))単旋律のきしみのある音や、高い音での歌いっぷりとシュヴィヨンとの掛け合いが、私は心に残りましたが。
それにしても石壁にカンカン反響するせいか、どっちの楽器も独特の固い音に聞こえ、それがまた心地よかった気がします。
アンコール1曲を入れて1時間数十分で終了。あー1ステージ目からこんなに書き込んでいたのでは、いつ終わることやら(^_^;;;
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Frances-Marie Uitti のこと
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この女性チェリスト(イタリア人?)のお名前を私は知らなかったので、会場で販売していたCDの1枚("UITTI 2 BOWS" BVHAASY 9505←オランダのレーベル)を購入して、今回のプログラムの解説と合せて経歴を見ると、「13才でソロ・デビュー。フォード財団賞、パブロ・カザルス・コンクール(1971)などで多数の受賞暦あり。バッハ以前のものから現代音楽までこなす。欧州、北米、韓国、日本など歴訪。ヴェネチア・ビエンナーレなどに定期的に出演。BBC Symphony Orchestra等、オーケストラとの共演も多い。」
とのことで、クラシックの現代音楽関係の方なんですね。録音としては、ジョン・ケージ作品、Scelsi全作品集、Jonathan Harveyのチェロ・コンチェルト(Etcetraレーベル)など。フランスではまだ、シュヴィヨンに比べれば知名度が低いんだそうですが。
特筆すべきは、この日もたっぷり見せてくれた弓を2本使う演奏で、彼女のオリジナル技法らしく、Luigi Nono, Giancinto Scelsi, Georgy Kurtag,Richard Barrett などが、この奏法による作品を彼女に献呈している、のだそうです。
来日なさったこともあるようですが、お聴きになった方ありますか??
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Pascal Contet (percussions) / Jean-Pierre Drouet (accordeon) Duo
1999年4月29日(木)20:00- Abbaye de l'Epau (Le Mans)
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夜の部は会場が変わります。13世紀に建てられたというここエポー修道院は、ル・マン中心部のRepublique広場からバス(14番)に乗って20分くらい、Pologneというバス停下車です(Epauというバス停のひとつ手前なので注意>来年行かれる方^^;)。後ろに広大な森林公園が広がっていて、深深と爽やかな森の香りがします。生け垣を飛び越えて鹿が走っていくのが見えたりします。(なんで自分はこんな所に来ているんだー、と現実感を失う。)
修道院のどこでコンサートをやるかというと、階上のドミトリー(寄宿舎。僧房っていうのかな?)です。カマボコ型の半円形の天井を持ち、巾11メートル、奥行43メートルという巨大な広間でした。カマボコの一端にステージが作ってあり、ずらーっとパイプ椅子がもう一端の奥まで並べてあります。ちょっとした体育館ほどの広さで、300人かもっと入りそうでした。
んで、パスカル・コンテとJPドゥルーエです。これがまだ3度目の顔合わせなんだそうですが、すごく完成されたステージで、とっても楽しかった(^^)。アコーディオンのジャズというか即興というか、私は初めて生で聴いたんです。こーんなこともできるんだぁ、という感じでとてもとても新鮮でした。こういうのがヨーロッパの音なのかなぁと。
ドゥルーエは、前回パリでスクラヴィス、フリスとのトリオを聴いたわけですが、こちらでは一段と茶目っ気を発揮していました。ご年配ですが、丸顔で丸っこい体つきにとても愛敬があります。パスカル・コンテがいきなり甘ったるいメロディを弾き始めると、そのたんびに怒り狂ってガラガラを鳴らしたり、しゅーっと声を出して威嚇したり、というのが笑わせどころになっていましたが、でも、そういうのが全然わざとらしくないのねー。すごいテクニックなのが分かるし、前にも思いましたが、たるんだところがひとつもないというか。全身で演奏しているさまは、ひとつのパフォーマンスを見ているような面白さもありました。銅鑼をたたいても、自分のほっぺたやアタマをこすりつけて反響を操作したり。汗がしたたっていました。何を叩いても音楽にしてしまいそう。ヴォイス・パフォ ーマンスもさりげなくて決まっていました。
短い時間(1時間少々)ですが、すごく集中の快感を味わわせてもらいました。リズムも起承転結もある楽しい即興というか、です。お客さんも大喜びでした。こういうのって、子供にも聞かせたい、って思う人が多いと思うのですが、私もそう思いました(^^ゞ